取引先から届くメールやPDFを読んで、必要な項目を表やシステムに入力し直す。多くの会社で毎日行われている作業です。1件あたりは数分でも、件数が多ければ毎日何時間にもなります。この転記の作業は、生成AIが得意とする仕事の一つです。

AIが向いている理由

これまでの自動化の仕組みでは、書式が決まっている文書しか読み取れませんでした。差出人ごとに書き方が違うメールや、取引先ごとに様式の違う注文書は、人が読むしかありませんでした。

生成AIは、書き方がばらばらでも、文章の意味をくみ取って項目を取り出せます。「金額」と書いてあっても「単価」と書いてあっても、同じ意味として扱えるのが強みです。「来月の中旬から」のようなあいまいな書き方も、決まりを伝えておけば日付に直せます。

仕組みの作り方

当社では、取引先から届く案件のメールをAIに読ませ、条件や金額などの項目をそろえて登録しています。その経験から、作るときの要点を挙げます。

取り出す項目を先に決める

AIに「読んで」と頼むだけでは、結果がそろいません。何という項目を、どんな形(数字、日付、選択肢)で取り出すのかを先に決めます。

あいまいな書き方をどう扱うかも、先に決めておきます。「60〜70万円」なら真ん中を取るのか、下限を取るのか。「即日」なら今日の日付にするのか。決まりを決めずにAIに任せると、同じ書き方でも結果が揺れます。

AIの出した結果を、そのまま信じない

AIの結果は、登録する前にプログラムで確かめます。金額が数字になっているか、日付があり得る範囲か、選択肢以外の値が入っていないか。おかしな値は空欄として扱い、人の確認に回します。

ここは仕組みの中で一番大切な部分です。AIは、ときどき形の崩れた結果や、ありえない値を返します。確かめる部分がなければ、それがそのまま登録されてしまいます。

AIに渡す前に、不要なものを除く

宣伝のメールや、同じ内容の再送までAIに読ませると、その分の利用料がかかります。差出人や件名で、明らかに対象外のものはAIに渡す前に除いておくと、費用を大きく抑えられます。

当社でも、取引先が同じ内容のメールを何度も送ってくることに後から気づき、本文が同じものはAIに渡さないようにしました。それだけで、AIの呼び出しが大きく減りました。

自信のないものは人が見る

すべての項目がそろわなかったもの、内容が複雑なもの、1通に複数の案件が書かれているものは、自動で登録せずに人の確認に回します。全部を自動にしようとせず、人が見る場所を残しておくことで、誤った登録を防げます。

失敗したときに止まる仕組みにする

AIの呼び出しは、ときどき失敗します。失敗したらやり直す仕組みは必要ですが、やり直す回数には上限を決めておきます。何度やっても失敗するメールを延々とやり直し続けると、その分の利用料がかかり続けます。

転記をAIに任せる仕組みの流れ
  1. 取り出す項目を決める項目と形(数字・日付・選択肢)、あいまいな書き方の扱い
  2. 不要なものを除く宣伝や同じ内容の再送は、AIに渡す前に除く
  3. AIが読み取る書き方がばらばらでも、意味をくみ取って項目を取り出す
  4. 結果をプログラムで確かめるおかしな値は空欄にし、人の確認に回す
  5. 自信のないものは人が見る項目がそろわない、複数の案件が書かれているもの

まずは件数の多い文書から

最初に取り組むなら、毎日届く件数が多く、取り出す項目がはっきりしている文書がおすすめです。件数が多いほど効果が大きく、項目がはっきりしているほど、結果を確かめやすくなります。

最初の数週間は、AIが読んだ結果と、人が読んだ結果を見比べる期間を設けると安心です。どんな書き方で間違えやすいのかが分かれば、決まりを足して直していけます。