生成AIは、文章を貼りつけるだけで要約や翻訳をしてくれる便利な道具です。その手軽さゆえに、入れてはいけない情報までうっかり入れてしまう危険があります。

社員の多くは、悪気があって入れるわけではありません。「議事録を要約しておいて」と頼まれて、そのまま貼りつけた中に、取引先の名前や金額が入っていた。よくあるのは、こうした場面です。

入れる前に考えたい情報

個人情報

お客様や社員の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどです。個人情報保護委員会も、生成AIのサービスに個人情報を入力する際の注意を呼びかけています。

履歴書、名刺の情報、問い合わせのメールなど、個人情報は思っている以上に業務の文章に含まれています。

取引先から預かった情報

取引先から受け取った資料や見積もりには、秘密を守る約束(秘密保持契約)がついていることがあります。外部のサービスに入れることが、その約束に反しないかを確かめる必要があります。

社内の秘密

公表前の新商品、売上の数字、人事の情報、採用や退職に関わる話などです。

システムに入るための情報

パスワード、システムに接続するための鍵、社内のシステムの設定など。プログラムのエラーを調べてもらおうとして、設定ファイルごと貼りつけてしまう例があります。

入れる前に考えたい情報
情報 例
個人情報 お客様や社員の氏名・住所・電話番号・メールアドレス、履歴書、名刺
取引先から預かった情報 秘密保持契約がついた資料や見積もり
社内の秘密 公表前の新商品、売上の数字、人事の情報
システムに入るための情報 パスワード、接続のための鍵、設定ファイル

サービスの設定と契約を確かめる

生成AIのサービスによっては、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっていることがあります。業務で使うなら、学習に使われない設定や、法人向けの契約になっているかを確かめます。

社員が個人のアカウントで使っている場合は、会社として設定を管理できません。業務で使うなら、会社として契約したアカウントを使ってもらうようにします。

ただし、学習に使われないからといって、何を入れてもよいわけではありません。外部のサービスに情報を送ること自体を、取引先との約束が認めていない場合もあるからです。

迷ったときの目安

入れてよいか迷ったときは、「この文章が、そのまま取引先に見られても困らないか」を考えてみてください。困るなら、名前や金額を伏せてから入れるか、入れるのをやめます。

伏せ方は簡単で、「A社」「B社」「〇〇万円」のように置き換えるだけで十分なことが多くあります。要約や文章の手直しであれば、固有の名前がなくてもAIは役目を果たせます。

システムに組み込むときの工夫

業務の仕組みにAIを組み込むときは、人の注意だけに頼らず、仕組みで守ることができます。

当社では、AIに書類を読ませる前に、氏名や連絡先などをプログラムで自動的に伏せ字にしています。AIが仕事に必要な情報は、経歴や条件であって、名前ではないからです。こうしておけば、AIに送られる文章には、そもそも個人を特定できる情報が含まれません。

ただし、伏せ字の仕組みも完全ではありません。書き方によっては、伏せきれない名前が残ることがあります。仕組みで守ったうえで、大事な場面では人が確かめる、という二段構えにしておくと安心です。

社内でルールを決めておく

社員がそれぞれの判断で使い始める前に、入れてはいけない情報の例を、具体的に示しておくと迷いが減ります。「機密情報は入れない」だけでは、何が機密なのかが人によって違います。「取引先の名前」「お客様の個人情報」「売上の数字」のように、具体的に書いておくのがおすすめです。