AIを業務で使う会社が増える中で、国のルールづくりも進んでいます。中心にあるのが「AI推進法」と「AI事業者ガイドライン」です。名前は聞いたことがあっても、自社に何が求められているのかが分からない、という声をよく聞きます。それぞれの位置づけを整理します。

AI推進法は「進めるための法律」

正式な名前は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」です。2025年5月に成立し、同年9月に全面施行されました。

名前のとおり、AIの研究開発と活用を国として進めるための法律です。政府の司令塔となるAI戦略本部の設置や、国の基本計画づくりを定めています。2025年12月には、この法律に基づくAI基本計画が閣議決定されました。

罰則のある法律ではない

AI推進法は、違反した事業者に罰則を科すタイプの法律ではありません。海外には、AIの使い方を細かく規制し、違反に重い罰金を科す法律もありますが、日本の法律は、活用を進めることに重きを置いた作りになっています。

一方で、事業者には国の施策に協力するよう努める責務が定められています。また、AIの不適切な使い方で問題が起きた場合に、国が調査し、必要に応じて指導などを行う仕組みも設けられています。

実務の拠りどころは「AI事業者ガイドライン」

AIを使う会社が日々の判断の拠りどころにするのは、総務省と経済産業省がまとめた「AI事業者ガイドライン」です。2024年4月に第1.0版が公表され、2025年3月に第1.1版、2026年3月に第1.2版へと改訂されています。

ガイドラインでは、AIに関わる事業者を「開発者」「提供者」「利用者」に分け、それぞれが取り組むことを示しています。

  • 開発者:AIそのものを作る事業者
  • 提供者:AIを組み込んだサービスを提供する事業者
  • 利用者:AIを使って業務を行う事業者

AIを使って業務をする多くの会社は「利用者」にあたります。自社のサービスにAIを組み込んでお客様に提供している場合は、「提供者」の立場も持つことになります。

AI事業者ガイドラインの3つの立場
立場 どんな事業者か
開発者 AIそのものを作る事業者
提供者 AIを組み込んだサービスを提供する事業者
利用者 AIを使って業務を行う事業者

利用者として取り組むこと

ガイドラインの考え方をもとに、AIを使う会社が取り組むことを実務に落とすと、次のようになります。

  • AIに入れてよい情報と、入れてはいけない情報を決める
  • AIの出した結果を、そのまま外部に出さず人が確かめる場面を決める
  • どの業務で、どのAIを使っているかを把握しておく
  • 問題が起きたときに、誰が判断し、どう止めるかを決めておく
  • 使っているAIサービスの利用規約や、データの扱いを確かめておく

どれも特別なことではなく、新しい道具を業務に入れるときの基本と変わりません。ただ、AIはもっともらしい誤りを出すことがあるため、人が確かめる場面を決めておくことが特に大切になります。

提供者の立場になるとき

自社のサービスにAIを組み込み、お客様に使ってもらう場合は、さらに次の点を考える必要があります。

  • AIを使っていることを、お客様に分かるように伝える
  • AIの結果に誤りがあった場合の扱いを決めておく
  • お客様の入力したデータを、どう扱うかを明らかにしておく

最新の版を確かめる

AIの技術は変化が速く、ガイドラインも改訂が続いています。直近の改訂では、AIが自分で手順を組み立てて仕事を進める「AIエージェント」に関するリスクの記述も加えられています。社内のルールを見直すときは、最新の版を確認するようにしてください。

参考:内閣府「AI戦略」 https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ /経済産業省「AI事業者ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/