「便利になりそうなのは分かるが、どれくらい効果があるのか」。システムの導入を検討するとき、社内でよく聞かれる質問です。ここで答えに詰まると、良い計画でも止まってしまいます。効果を数字で示す方法を整理します。

まずは今の作業時間を測る

効果を示す一番の近道は、今その業務にかかっている時間を測ることです。

たとえば、受注の内容を表に転記する作業なら、1件あたり何分かかっているか、月に何件あるかを数えます。1件5分、月に600件なら、月に50時間です。これに作業する人の時給をかければ、今かかっている費用のおおよその額が出ます。

感覚ではなく、実際に何日か記録を取るのがポイントです。「1件1分くらい」と思っていた作業が、確認や手戻りを含めると5分かかっていた、ということはよくあります。その逆もあります。

測るときは、作業そのものだけでなく、前後の時間も含めます。メールを開いて内容を探す時間、入力した内容を確かめる時間、間違いを直す時間。こうした時間は、作業している本人も気づきにくい部分です。

時間以外の効果も数える

時間の短縮だけが効果ではありません。

  • 転記のミスが減る:ミスの修正や、取引先へのお詫びにかかっていた時間
  • 対応が早くなる:問い合わせへの返答が早くなることで、取りこぼしていた注文
  • 担当者が休んでも回る:特定の人しか分からない業務がなくなることによる安心
  • 数字がすぐに見られる:月末を待たずに状況が分かることで、早く手を打てる

数字にしにくいものは、無理に金額にせず、具体的な出来事として書き添えるほうが伝わります。「先月、転記のミスで取引先に誤った金額の請求書を送り、お詫びと再発行に半日かかった」という一文は、どんな試算よりも説得力があります。

IT投資の効果を数字にする流れ
  1. 今の作業時間を測るその業務に、今どれくらいの時間がかかっているか
  2. 時間以外の効果も数えるミスの減少、対応の早さ、担当者が休んでも回ること
  3. 費用と比べる作る費用に、毎月の利用料や保守の費用も含めて比べる
  4. 控えめに見積もる最初から100%の効果を見込まず、7割程度で計算する
  5. 導入した後に確かめる見込んだ効果が出ているかを確かめる

費用と比べる

効果の見込みが出たら、システムにかかる費用と比べます。作る費用だけでなく、毎月の利用料や保守の費用も含めて比べるのが大切です。

月に50時間、時給2,000円の作業がなくなるなら、月10万円分の効果です。システムの費用が初期に50万円、毎月1万円なら、効果から毎月の費用を引いた9万円で初期の費用を回収するので、6か月ほどで元が取れる計算になります。

ここで注意したいのは、浮いた時間が本当にお金に変わるのか、という点です。作業が減っても、その時間がほかの価値のある仕事に使われなければ、効果は数字の上だけのものになります。浮いた時間を何に使うのかも、計画に書いておくと説得力が増します。

控えめに見積もる

効果の見込みは、控えめに見積もっておくことをおすすめします。導入した直後は、慣れない操作で時間がかかることもあります。最初から100%の効果を見込むより、たとえば7割程度で計算しておくほうが、後で「思ったほどではなかった」と言われずに済みます。

導入した後に確かめる

導入した後も、同じ方法で作業時間を測り直します。導入の前と同じ測り方をしておかないと、比べられません。

見込みどおりの効果が出ていなければ、使い方か、システムのどこかに問題があります。現場の人に話を聞くと、思わぬところで手間がかかっていることが見つかります。測り直すことで、次に何を直せばよいかが分かります。

そして、確かめた結果を社内に報告しておくと、次のIT投資を提案するときの材料になります。